2020年7月18日 更新

D.I.Y.リサーチ入門(8)

DIYリサーチのツール・サービス、アンケートの設計から分析までのかんたんな入門コラム

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2 アンケートの対象者(パネル)と配信・回収

前回までDIYリサーチツールを使ったアンケート画面作成について説明してきましたが、今回からはアンケートの対象者と依頼・回収に関することを書いていきたいと思います。

まず、最初に「対象者」について少しだけ言葉の整理をします。調査はそれぞれ誰を対象にするか決めるところからはじまるわけですが、その「誰」は、例えば「当社の顧客」であるとか「新商品の見込み客」「社内の管理職の人」「東京に住んでいる20~34歳の人」「感染症についての有識者」などなどいろいろあります。こうした「誰」のことを、調査の「対象(母集団)」といいます。

実態を調べるアンケートの場合、本来の調査対象は人ではなく、アンケートの回答者はデータの記録者・収集者であるケースもあります。例えば、「新宿区の一戸建住宅」が調査対象でアンケート回答者はその住宅居住者の代表者とする場合(家の階数、築年数、延べ床面積を調べるなど)とか、「全国の従業員30人以上の事業所」が調査対象で事業所の総務担当者にアンケートを依頼する(従業員数、業種、飲料自販機の設置の有無を調べるなど)とか、「2020年7月第1週に配布された新聞折込チラシ」が調査対象で、新聞購読世帯の任意の世帯員にアンケートでチラシの内容(枚数、業種、カラーか白黒かなど)を調査するとか。これらの場合は人ではなく住宅、事業所、チラシが「対象(母集団)」になります。

さて、実際にアンケートを行うとき、対象(母集団)すべてにアクセスできることはほとんどありません。「当社の顧客」が対象であっても、メールアドレスや電話番号がわからないと依頼できないので、例えば「メールアドレスが判明している顧客リスト」が実際に依頼できる範囲となります。この「実際にアンケートを依頼できる範囲の集合」を「リスト」あるいは「標本枠」といいます。

「リスト」の数を「対象(母集団)」の数で割ったものを「カバー率」といいます。カバー率が調査結果の正確性を推しはかるための一つの指標になることはわかると思います。先の例では、顧客が2,000人で、メールアドレスが判明している顧客リストが1600人分だった場合、1600 / 2000 = 80%のカバー率です。20%にアクセスできない、といっても実際にはこれはまあまあ理想的な状況といえます。「東京に住んでいる20~34歳の人」の場合、住民基本台帳人口に基づくと約270万人いますが、あるリサーチ会社の保有するリストで該当する人が20万人だった場合(日本のインターネット調査のパネルでは平均くらい)、カバー率は7.4%にすぎません。このカバー率で正確性が十分といえるかどうかは、調査目的や調査内容から検討することになります。

さて、リストに存在する全員にアンケートを依頼する場合もありますが、多くの場合はコスト・手間が見合わないので、その中から一部を選び出してアンケートを依頼します。これを「標本調査(サンプリングサーベイ)」といい、この一部を「標本(サンプル)」といいます。このとき、意図的に一部を選ぶのではなく、確率的に選び出した場合、全体を調べなかったことによる誤差の範囲が計算できます(「標本誤差」)。

標本誤差も調査の正確性をあらわす指標になります。ちなみに「標本誤差表」を調べてもらうと(たいてい、単純無作為抽出=選ばれる確率を等確率にした選び方の標本誤差が記載されています)、ほとんどの調査では、比較的少数を調べれば、調査目的からみて十分な正確性があるというように感じられると思います。

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リストから一部(標本)を選び出してアンケートを依頼したとしても、全員が協力してくれることはほぼありません。「回答者」と協力してくれなかった「無回答者」に分かれます。回答者数を標本サイズ(標本に含まれる人数)で割ったものを、「回答率」または「回収率」といい、これも調査の正確性の指標の一つです。したがって、調査の際には回答率を高めるために知恵を絞る必要があるのですが、回答率を高めるための謝礼を用意することがあり、これを「インセンティブ」といいます。インセンティブを何にして、どう回答者に提供するかもDIYリサーチを実施する上で難しい検討事項になることがあります。

調査の正確性については、ここまでに示した指標のほかに「測定誤差」(アンケートに答えてくれても、正しく答えていない場合の誤差)、「処理上の誤差」(回答をデータにするときや集計処理上生じる誤差)があげられますが、これらについては後の機会で説明します。

ちょっと基本的な言葉の整理が長くなりました。次回は対象者のリストがある場合とない場合、「パネル」の利用などについて書きたいと思います。

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