2020年7月2日 更新

調査結果を気軽にけなす素人がむかつく

ネットリサーチCron : リサーチ関連の話題・手法について、業界内外の人が息抜きに読めるような軽いコラムです。

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SNSに辟易する

ときおりSNS上で調査結果が話題になることがあり、ということは公表されているものだから、マーケティング・リサーチというより世論調査や社会調査、各種統計の類が多いのだが、そういうときに頓珍漢な批判やケチをつける素人が多く、自分が専門で携わっているものだから、非常に腹が立つ。

内容を読めば批判ともいえないようなレベルの無理解や陰謀論的なものばかりで、「素人ならではの、専門家には気づかない視点」などというものはほとんどない。かつ物知り顔で講釈をたれるような口調も多いので「無礼者、分をわきまえろ」と思わず封建的な人格になってしまう。

こうした腹立たしい事態について、一体どういうことが起こっているのか、Twitterのデータをちょっとだけ分析してみたい。

Twitter分析

データは、5月25日の午前中、7時から12時くらいにツイートされた、「世論調査」についてのツイートをスクレイピングしたもの(999ツイート)である。この時期は毎日と朝日で内閣支持率が低下した世論調査結果が報道されたので、政権支持者側からのケチつけが多いが、逆の結果のときは不支持層からのケチが多くなるので、それほど特異な時期ではないと考える。

この999ツイートは、917アカウントから発信されており、同一アカウントからのツイートの分布は下図のとおり、ほとんどが1ツイートであるが「世論調査」について8ツイートした人もいる。
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ツイートはリツイートされて拡散されるが、999ツイートのうち、約800はこの時点(25日12時)ではリツイートされていない。一方、1000を超えるリツイートがされたツイートもあり、少数の非常にたくさんリツイートされるものがある。

下図は横軸にリツイート数を対数目盛で置いたグラフ。
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次のグラフはツイートしたアカウントのフォロワー数を図示したもので、横軸にはフォロワー数を対数目盛で表示している。なお、ツイート単位でプロットしているので、ダブルカウントされているアカウントがある。

フォロワー数0人のアカウントから、フォロワーが100万人近いアカウントまで、非常にばらつきがある。
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さて、このデータのうち「世論調査」に根拠のない批判・中傷をしているツイートがどのくらいあるかというと、26%、4分の1に及ぶ。
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根拠のない批判・中傷に当たるツイートの例はどんなものか、以下に列挙する。

世論調査の数字もそもそも当てにならない。母集団に偏りがある新聞社の調査、しかも信頼性が証明されていないRDD調査だからな。
〇〇世論調査方法って調べればひどいやつ出てくるから、偏らない?そんなことないです^_^
〇〇新聞のインチキなんじゃないの?
データなんてそんなもの左翼の願望を数値化し弱者を騙しているだけ。
〇〇新聞記者の世論調査会社の恣意的な支持率に笑いが起きてる
「統計の嘘」ってのがあってねぇ・・・正直、最近世論調査ってのを独自で勝手にやることが増えたのは、お手軽で操作しやすいからってのはあると思うんだ
今時、電話での世論調査って。全くと言っていいほどあてにならん。なぜこのご時世に電話調査なのか。
〇〇新聞の世論調査に参加してる人間が政府を支持する訳がない。無駄だ。
新聞社の世論調査などは所詮「メディアの捏造報道による無辜の民をどれだけミスリードできたか」の指標でしかない。
世論調査ではなくて社内調査かもね(笑)
世論調査内閣支持率って信用ならんくない?2000人くらいの意見じゃなぁ……
まぁ世論調査は対象者や聞き方とかである程度操作は可能なのは周知の事実ですからね。



さて、「根拠のない批判・中傷」ツイートをしているアカウントにはいくつか傾向があって、まず「世論調査」を含むツイートを数多くしている人ほど「根拠のない批判・中傷」が多い。
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また、「根拠のない批判・中傷」ツイートをしているアカウントは、フォロワー数が少ない。下図はそのアカウントのフォロワー数をウエートとして比率を計算したもの。「根拠のない批判・中傷」の比率は14%に下がる。
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フォロワー数が少ない人のツイートであれば、リツイート数も少ないかと思いきや、そうではない。リツイート数(正確にはリツイート数に元ツイートの1を加えた数)をウエートとして集計してみると、「根拠のない批判・中傷」ツイートは26%で、ウエートなしのツイート数単位集計と変わらない。

つまり、少ないフォロワーの間でたくさんリツイートしている傾向がある。
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まとめると、「根拠のない批判・中傷」ツイートをするアカウントは、そのことを何度もツイートしがちであり、少ないフォロワーの間でたくさんリツイートしている(必死)、という傾向があるといえるだろう。

職業意識と専門性

何のためにこんな分析をしたのかわからなくなってきたが、言いたいことは、左右のイデオロギーに関わることではなく、また、伝統的調査手法を擁護したいのでもない(ネットリサーチに対しても同様の根拠のない批判中傷はたくさんある)。

自分の専門が調査や統計だから「世論調査」を題材にしたが、他の専門の人は、それぞれ自分の分野について、同じようなことを感じているに違いない。言いたいことは、「素人が考えるようなことは、専門家は100年前に考えている(あるいは、10000倍くらいそのことについて考えている)」というような想像がなぜつかないのかということである。

別に、サンプリングの様々な手法とか、世論と民意の違いとか、政治部と世論調査部の関係と歴史とか、象徴闘争と民主主義とか、難しいことを素人が知る必要はないし、知っていなければ発言できないわけでもない。
ただ、自分の専門にしていることを考えたら、他の分野の専門家も、同様に現場でどれほど考えているか、わかりそうなものだと思うのだ。それとも、そういう人は自分の職業意識・専門意識も低い、ということなのだろうか。

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この記事のキュレーター

KOJI.A KOJI.A