2020年11月26日 更新

エスノグラフィーとは?

現在ではまだまだ知られていないエスノグラフィー。ただマーケティングの先端では古くから利用されているようです。その成り立ちと特長を解説します。

文化人類学をビジネスに応用する

文化人類学をビジネスに応用する

エスノグラフィーとは?

エスノグラフィーとは、リサーチ対象者の生活を観察・体験することにより、生活者の生活スタイルや思考、嗜好などの質的な定性データを収集するリサーチ手法となります。

エスノグラフィーの歴史

エスノグラフィーのルーツは文化人類学といわれており、ポーランド系イギリス人の文化人類学者ブロニスワフ・マリノフスキの「西大西洋の遠洋航海者」という書物が原点の1つともいわれています。それから文化人類学ではよく取り入れられる手法となり、やがて社会学にも応用されるようになります。社会学で応用されるようになってから、会社、学校などといった一般的な社会の枠組みから、スラム街や新宿ゴールデン街といった偏りの強い生活スタイルの理解といったものにまで利用されるようになります。

このような流れの中から1980年代にエスノグラフィーはビジネスにおいても利用されるようになっていたようです。当時は製品のユーザーインタフェースを開発する際に、右脳的な「デザイン思考」が主流となっていましたが、その「デザイン思考」が体系化されるにつれ、エスノグラフィーの視点や方法論などが注目を浴びるようになり、ビジネスでも用いられるようになったようです。

エスノグラフィーのメリット

メリット①

エスノグラフィーのメリットとして挙げられるのは、調査主体が想像していたなかったニーズや結果を掘り起こすことが可能になるという点にあります。
デプスインタビューやグループインタビューといった定性調査では、特定の商品やサービスについて掘り下げてリサーチを行うことになりますが、エスノグラフィーの場合前述のとおり、「生活者ありき」というリサーチ手法になるので、調査主体や商品・サービスの主観や先入観にとらわれず、まったく新しい視点からの気付きを得ることができます。

メリット②

人は行動や思考のおよそ95%が無意識化に置かれているといわれています。
マーケティング的に同じような属性といわれる群においても、じつは生活の実態が全く異なっていたり、思考や判断基準、価値観が異なったりします。
生活スタイルから“生活者ありき”を軸とするエスノグラフィーは、グループインタビューやデプスインタビューでは見えなかった、“生活に基づく”質的データを蓄積することが可能になります。

エスノグラフィーと他調査手法との違い

エスノグラフィーは元来、文化人類学や心理学などの学術をベースに使用されてきた調査手法になります。
異なる生活文化で暮らす人々に対して、観察やインタビューなどを用いて質的なデータを収集する定性調査と一種となります。
定性調査として有名な手法としてデプスインタビューがありますが、エスノグラフィーとデプスインタビューにはどのような違いがあるのでしょうか?デプスインタビューは“何について、どのような層に”リサーチを行うのか明確になっている際に使われる手法になります。それに対してエスノグラフィーは“このような生活スタイルを送っている層に刺さるモノ・ことは何なのか?”ということを明らかにする調査手法になります。

デプスインタビューは「商品ないしはサービスありき」なのに対して、デプスインタビューは「生活者ありき」という視点の軸が異なることが最大の違いになります。ビジネスのステータスで表すのであれば、デプスインタビューは商品やサービスが市場に出る直前または出た後に行われるのに対し、エスノグラフィーはまだ新商品・新サービスの企画が固まる前に行われるということになります。

エスノグラフィーの事例紹介

花王のアンチエイジング

トイレタリーメーカーの花王はアンチエイジングを行う理由をエスノグラフィーで調査を行ったようです。
そのなかでアンチエイジングを行う理由を「アイデンティティの変化に対するリアクション」と理由付けをしたそうです。
その後、アンチエイジング商品のメインコンセプトを環境変化に対する支援を掲げ、商品展開を行い成功を収めているとのことです。

キリンのエスノグラフィー

若者のビール離れなどが言われる昨今、キリンは若者のアルコール飲用に対するエスノグラフィーを実施しました。そこで判明したことは、“くつろぎの時間”に“友人など気の置けない仲間”と“日常から解放され、豊かな気持ちになりたい”というものだったようです。
そして若者ウケの良い“自然な美味しさと果実感”や“部屋に置きたくなるボトルデザイン”を取り入れ、新商品を開発しました。
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栗田(MRJ副編集長) 栗田(MRJ副編集長)