2020年6月2日 更新

オンライン定性調査って今どうなの?

ネットリサーチCron : リサーチ関連の話題・手法について、業界内外の人が息抜きに読めるような軽いコラムです。

gettyimages (204)

はじめに

こんにちは、Koji Allen (アレン・コージ)と申します。本業はリサーチャーですが、この度はコラムニスト/エディターとして「ネットリサーチCron」というコラムを担当します。

Cronは「クローン」ではなく「クーロン」と読みます。ネットリサーチ界隈の人はわかると思いますが、トラディショナルの方は知らないと思うので一応説明すると、Linuxサーバとかで一定時間ごとに処理をしてくれる常駐プログラムのことです。でもそれはどうでもよくて、要は「空論」の駄洒落です。

ネットリサーチに関連するあれやこれやについて、リラックスした態度で書いていきたいと思います。Cronなので定期的な連載を予定しています。(ライターは何人でもいいので、書いてみたいことがある方はMarketing Research Journal編集部までご連絡下さい。)

under COVID-19

さて、これを書いているタイミングは、after Corona / beyond Coronaはいつになったら来るのだろうと思っている5月下旬なのですが、under COVID-19において、業界の一番の話題は「オフライン調査をどうする?」だったかと思います。

時事通信社の月例世論調査(訪問、Face-to-face)が60年ではじめて中止になったとかのニュースもありました。商業的なリサーチでは、やはりグループインタビューやデプスインタビューなどの定性調査をどうするかということでしょう。関係するニュースリリースなどを集めてみました。

『GMOリサーチ、パネル利用とオンライン定量・定性調査をワンストップで行うことができるクラウドソリューションサービス「MO Insights」提供開始』(MarkeZine 2020/03/23)

定性調査機能は、カナダのInteractive Tracking Systems社と独占契約した「ビデオIDI(デプスインタビュー)」と「ビデオチャット」の2つのツールのようです。

『完全リモートによる定性調査が好評 マインディアがシステムの大幅増強を発表』(ITmedia 2020/04/15)
こちらも1対1、1対多のビデオインタビュー。「ミラールームをオンライン上に再現し、見学者はPCがあればオンライン上で定性調査を見学できる。さらに、見学者はリアルタイムでモデレーターにチャットで指示を出せる」とのことです。

『テレワークでも、定性インタビュー以上の消費者理解を得る手法とは?オンラインセミナー無料開催-株式会社デコム』(PR TIMES 2020/04/23)

これはオンライン定性の方法論についてのセミナーですね。オファーが多いことが伺えます。「コロナ禍で対面できなくても消費者理解を可能とするオンライン定性調査の手法」とのことです。同様ですが、オンライン定性の指南書的なものを出したのが、

『株式会社アスマーク 「失敗しないオンラインインタビュー」冊子を無料公開-インタビュー調査のオンライン化は実は難しい…オンラインインタビューを失敗しないためのノウハウを完全伝授』(PR TIMES 2020/04/28)

アスマーク社は大忙しになったようで、

『株式会社アスマーク 体制強化によりオンラインインタビュー実施2か月で25倍増』 (PR TIMES 2020/05/07)

記事を読むとDI(デプスインタビュー)が多いようです。受託案件の8割と書いてあります(ということは2割がグルインかな?)。アスマーク社は対象者リクルーティングに長けているので有利ですね。

海外でももちろん同様で、こんなWebinerが開かれてます(米Digsite社主催)。

“WHAT YOU NEED TO KNOW WHEN CONDUCTING ONLINE QUALITATIVE RESEARCH DURING THE COVID-19 OUTBREAK”
Webinar: Qualitative Research in the COVID-19 Era
Date: 13th April 2020


ついでに、アメリカのリサーチ会社が、対応に追われたことが伺えるニュースもありました。

“THIRD OF US QUAL AGENCIES SHIFT TO ONLINE / Katie McQuater “ (research-live.com)
“The first wave of a survey of the organisation’s members, conducted on 18th-19th March, found that 31% of qual-focused agencies had shifted 80% of their in-person research to online methods by mid-March.”


日本にもどって、JMRXでも、JMRA委員の岸田さんの肝いりでオンライン・イベントが行われたようです。私は参加しそこなったのですが。

「Withコロナ時代に向けたリサーチ業界の準備(その2) ―オンラインFGIについてのオンライン・イベント-」(2020/4/23)

このJMRXのイベントでの吉田朋子さん(定性リサーチャー)のプレゼン内容が勉強になるので、申し訳ないが長々掲載すると

「Qual Online : エッセンシャルガイド(Jennifer Dale & Susan Abbott著)という・・・二人の著書をもとにプレゼンから始まりました。・・・オンライン定性にも、オンライン掲示板、チャット・グルイン、オンラインFGI(Webcam Group)、オンラインIDI、オンライン・ダイアリー、ソーシャルリスニング、モバイルインタビュー、モバイルエスノグラフィー、インサイト・コミュニティ(MROC)など、さまざまな手法があります。リアルで行う調査と同じ発想で同じアウトプットを期待してもうまくいきません。私たちはリアルのFGIでやるのと同じ発想で同じことをオンラインでしようしているから、できないと言っているのではないでしょうか。もっと柔軟にオンラインに適した方法を考えて、オンラインならではの価値を提供していきませんか。」

オンライン定性調査への期待

ここまでを強引にまとめると、コロナの影響でビデオ通話を使った定性調査が急激に使われるようになったが、オンラインにはオンライン特有のポイント、手法があるということでしょうか。

私の専門は定量なので定性調査には詳しくないですが、10年近く前MROCが話題になったころは、DUB社のMROCツールを使って実験調査をしたり、ベルギーあたりの若くて元気のいいリサーチャーたちの議論をよく読んでいました。そのころと比べると、ビデオ通話をどう使うか、ということが大きなテーマになってきたと思います。

ビデオ通話は、コロナ以前には仕事でも私用でもほとんど自分が使うことはなかったのですが、ここ最近はZoomやMicrosoft Teams を始終使うようになりました。研修の講師をZoomでやったときは、操作に加え、しゃべりながらチャットなどの情報を見たり、受講者の反応もよくわからないし、マルチタスクで四苦八苦。

先日はDiscodeも試してみました。Discodeはゲーム用チャット/ビデオ通話ツールで、拡張性に優れています。拡張機能を使えば、参加者で映像/音楽を共同視聴、文書共有、AI Botとの会話などもできます。私はゲームで使ったわけではなく、「上原落語会」という会で、オンライン落語に対する聴衆の反応を演者の落語家に返すツールとしての実験をしており、聴衆として参加したのですが、参加者のコントロール・事前説明や、ホスト/サーバ側での参加者のマイクのチューニングなどがなかなか難しそうでした。

オンライン定性調査には、今、技術的な課題、いいかえれば可能性がたくさんあると思います。参加者のエンゲージメントやクリエイティビティを高めるとか、事後の分析をするためのQDAツールとか、定性調査固有の観点・ノウハウがあるわけなので、そこで良いツールを開発すれば、リサーチ以外にも使われるようになったりするかも、と空想します。
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